2026.11.03
AI活用 見積AI

見積AIは内製か外注か|社内SEと外部の役割分担

見積AIは内製か外注か|社内SEと外部の役割分担

見積AIを社内SEで作るか、外部に頼むかで迷っている製造・商社の情報システム部門と営業責任者の方へ。答えは「全部内製」でも「全部外注」でもなく、作業ごとに分けることです。正しい見積の判断と運用の担当は社内に残し、資料の読み取りや計算の仕組みづくりなど手が足りない部分を外部に頼む。この分け方なら、外部の会社が変わっても見積の決め方は社内に残ります。

この記事では、見積AIを作る作業を5つに分け、それぞれ社内と外部のどちらが担いやすいかを整理します。材料は、私たちが見積AIを設計している2つの案件と、公開されている他社の事例です。私たちの案件はどちらもPoC(小さく試す検証)の前で、出てくる数字はすべて試算です。


見積AIを作る作業には、何がある?

「見積AIを作る」とひとことで言っても、中身は次の5つの作業に分かれます。内製か外注かは、この単位で考えます。

作業 中身
1. 業務の整理 どの見積を対象にするか決め、ベテランが何を見て判断しているかを聞き取る
2. 過去見積の整理 PDFやExcelに散らばった見積を読み取り、比べられる形にそろえる
3. 仕組みづくり 似た見積を探す、部品と工数の下書きを作る、合計を検算する部分を作る
4. 試して確かめる AIの下書きと実際の見積を比べ、使えるかどうかを判定する
5. 運用 単価表や部品の情報が変わったときに直し、問い合わせに答え続ける

私たちが設計してきた案件で時間がかかるのは、2と5です。画面や検索の部分は作れても、資料がそろわず止まる。あるいは作った人が異動して、直せる人がいなくなる。内製で気をつけたいのはこの2か所です。


社内SEに任せやすいのは、どの作業?

社内SEが強いのは、社内のシステムと資料の置き場所を知っていることです。そのため、次の作業は社内で担いやすくなります。

  • 対象にする見積の資料を集め、どこに何があるかを示す
  • 基幹システムや共有フォルダとのつなぎ方を決める
  • 対象を1つの製品群に絞った、小さな試作
  • 稼働後の単価表の更新や、使う人の権限の管理

反対に、通常業務の合間では進みにくい作業もあります。形式がばらばらの見積を大量に読み取ってそろえる作業や、AIの下書きが外れる原因を分類して直していく作業です。どちらも専任に近い時間が要るので、ここを外部に頼むと早く進みます。

見積AIの作業を社内と外部で分ける。判断と運用は社内、読み取りや仕組みづくりは外部も使う

外部に頼んでも、社内に残る仕事は?

外注しても、なくならない仕事が3つあります。

1つめは、正しい見積を決めることです。AIの下書きが合っているかどうかは、見積を作ってきた社内の人にしか判定できません。外部の会社が答え合わせの基準を作ることはできないのです。

2つめは、客先に出す金額を決めて承認すること。AIは過去の似た見積や単価の幅を示すところまでで、最後の金額は人が決めます。

3つめは、更新の担当を決めること。部品の番号や単価表が変わるたびに、誰が直すのか。これが決まっていないと、運用保守の契約を結んでいても仕組みは古くなっていきます。

この3つを社内に残しておけば、外部の会社は資料の整理と仕組みづくりに集中できます。


内製で止まりやすいのは、どこ?

いま見積AIを設計している空調機器メーカーは、特注品が多い会社です。基幹システムで概算見積までは半自動で出せますが、客先に出す本見積は、過去の似た見積を探して直す作り方をしています。

困っているのは本見積のほうでした。機種ごとの部品の一覧が膨大で、機器と部品の結びつきが整理されていないため、新人はどの部品と工数を選べばよいか分かりません。つまり、AIを作る前に「機器と部品の対応を整える」作業が控えています。社内SEだけでこれを抱えると、AIを試す前に止まりかねません。

この案件では、対象の機種を絞り、過去の見積と部品・工数を照らし合わせるところから始める設計にしました。月250件・1件平均90分という前提で試算すると、1件あたり約30分になり、年間で約3,000時間の削減が見込めます。PoC前の試算で、実測値ではありません。


外部と組むとき、試作の範囲はどう決める?

もう1つの案件は、持株会社のクリエイティブ部門です。デザインの外注先の選び方と見積の妥当性の判断が、担当者の経験に頼った状態でした。過去の見積書はPDFとExcelで、形式もばらばらです。

ここでは、試作と本番の開発を分けています。試作で確かめるのは、資料の取り込み、似た案件の検索、概算金額の算出、候補になる外注先の表示まで。ログインや権限の管理、基幹システムとの連携、操作の記録といった部分は、本番の開発に回しました。試作の段階では「使える見積が出るか」だけを確かめる、という切り方です。

あわせて、試作の合格条件を着手する前に書面で決める提案をしています。条件は3つで、検索と算出の精度70%以上、現場の担当者による評価70以上、情報システム部門の確認です。画面が動いたら合格、にしないためです。

外部に頼むときは、この「試作で何を確かめ、何を本番に回すか」を契約の前にそろえておくと、話が食い違いません。

試作と本番を分け、合格条件を着手前に決める

公開されている事例では、どう分担している?

公開事例でも、社内と外部で役割を分けた例があります。電気設備工事の関電工は、工事費の概算を出す仕事で、AIの会社と2回PoCを行いましたが、期待した成果は出ませんでした。そこで、計算は決まったルールで処理し、AIは情報の抽出などに役割を絞る形に切り替えています。データの分析と方式の提案、開発は外部のコンサルティング会社が支援し、社内からはIT・積算・技術開発・業務などの部門の知見を集めたと報じられています。記事の見出しでは、工事費の計算が「1〜2週間→数十分」になったとされています(@IT、2026年9月4日。2026年10月時点で確認)。

この例から読み取れるのは、外部に頼むかどうかより、AIに何を任せ、何を決まった計算に残すかを先に決めたことが転機になった点です。積算の知識を持つ部門が加わっていたことも、外注先任せにしなかった表れでしょう。


内製か外注かを決める5つの問い

次の5つを、営業と情報システム部門で一緒に確かめてください。「いいえ」が付いたところが、外部と組むかを考える作業です。

  1. 対象にする見積を1つに絞れているか
  2. 過去見積を、比べられる形で取り出せるか
  3. AIの下書きが正しいかを判定する人を決められるか
  4. 資料の読み取りと仕組みづくりに、社内SEが専任に近い時間を出せるか
  5. 稼働後に単価表や部品の情報を直す担当を置けるか

1・3・5は、外注しても社内で答えを出す問いです。ここが「いいえ」なら、外部に頼む前に社内で担当を決めます。2と4が「いいえ」なら、そこが外部に頼む候補になります。

内製か外注かを決める5つの問い

よくある質問

Q. 社内SEが1人しかいなくても内製できますか?
A. 対象を1つの製品群に絞った試作なら始められます。ただ、過去見積の読み取りと稼働後の更新まで1人で抱えると、通常業務と両立しにくくなります。更新の担当を別に決められるかで判断してください。

Q. 外注したら、社内に何も残らなくなりませんか?
A. 契約の前に、整理した過去見積のデータ、計算のルール、設定の説明を受け取れるかを確かめてください。正しい見積の判断と承認を社内に残しておけば、外部の会社が変わっても見積の決め方は社内に残ります。

Q. まず内製で試して、うまくいかなければ外注に切り替えてもよいですか?
A. 切り替えられます。そのときに役立つのは、試作で使った見積と、どこで止まったかの記録です。止まった場所が資料の整理なのか、判定する人がいないことなのかで、頼む範囲が変わります。

Q. 社内で使っている生成AIのチャットだけで作れますか?
A. 少ない件数なら、似た見積を探す補助には使えます。ただ、部品と機器の対応が整理されていないと、抜けの指摘や合計の検算はできません。チャットで試すのは、過去見積を比べられる形にそろえた後がよいでしょう。


見積業務のどこからAIにするか、30分で整理します

株式会社AIworkerでは、30分の「AI業務診断(無料)」を行っています。いまの見積の流れと、時間がかかっている場所をお聞きし、どの製品・どの作業から始めるとよいかを整理してお渡しします。

AI業務診断(30分・無料)を予約する

見積の属人化はAIで解消できるか|ベテランの値付けを引き継ぐ手順

見積AIは内製か外注か|社内SEと外部の役割分担

見積AIの開発費用は何で決まるか|見積書で確かめる内訳

Produced by cantik