1年間に1,200件商談して分かった、AIが社内に広がらない5つの理由
株式会社AIworker 代表の杉本です。私たちはこの1年間で、1,200件を超える商談をしてきました。相手は製造業、建設業、不動産、商社、大学までさまざまで、話題はほぼすべて「社内でAIをどう使うか」です。
商談の録画を見返していて、お客様が同じところでつまずいていることに気づきました。そこで、録画と文字起こしが残っている商談775件(約590社)を読み直し、お客様が口にした「AI活用の壁」を数えてみました。
一番多かったのは「入れたのに使われない」
結果から書きます。壁をはっきり口にした85社のうち、多かったものは次のとおりです。
| 順位 | 壁 | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 入れたのに、使う人が広がらない | 38% |
| 2 | セキュリティ・情報漏えいが不安 | 33% |
| 3 | 予算がない、稟議が通らない | 21% |
| 4 | 進め方が決まっていない(ルール・推進役・使い道) | 20% |
| 5 | 効果が見えない、データが紙のまま | 16% |
※1社が複数の壁を口にしている場合があるため、合計は100%になりません。
意外だったのは1位です。AI導入の壁というと「セキュリティが厳しくて入れられない」「予算が取れない」を想像する方が多いと思います。ところが一番多かったのは、すでにCopilotやChatGPTを入れた会社の「使われていない」という悩みでした。導入の壁を越えた会社が、その先で止まっています。
ここから、5つの壁を順に見ていきます。お客様の言葉はそのまま載せ、社名だけ伏せました。
理由1 入れたのに、使う人が広がらない(38%)
「残りの八割は、そもそも使ってない」
「Copilotとか導入したけど、あんまり使えてない」
「使わない子は使わない」
よくある流れはこうです。全社でライセンスを契約し、全社員向けの研修を1回開く。研修のアンケートは好評。ところが3か月たつと、毎日使っているのは一部の詳しい人だけになっている。
原因は、研修で教えるのが「AIの使い方」で、「自分の仕事のどこに使うか」まで落ちていないことです。プロンプトの書き方を覚えても、明日の見積書づくりや議事録づくりにどうつなげるかが分からなければ、手は動きません。
私たちのやり方:研修は部署ごとに分け、参加者が自分の業務を持ち込んで、その場で1つ仕上げるところまでやります。終わったあとも1〜3か月は現場に入り、使えていない人の隣で一緒に手を動かします。
理由2 セキュリティ・情報漏えいが不安(33%)
「セキュリティ周りがすごい厳しかったり」
「個人情報、入れちゃダメ、入れちゃダメなんで」
大企業ほど多い壁です。情報システム部の審査に数か月かかり、そのあいだに担当者の熱が冷めてしまう、という止まり方をよく見ます。
ただ、話をよく聞くと「何が危ないのか分からないから、全部禁止にしている」というケースが少なくありません。入力したデータが学習に使われない契約になっているか、どの情報なら入れてよいか。ここを最初に整理すれば、審査は早く進みます。
私たちのやり方:初回の打合せで、セキュリティチェックシート(59問)への回答を先にお渡ししています。審査の担当者が知りたいことを、聞かれる前に出しておくためです。
理由3 予算がない、稟議が通らない(21%)
「これ、予算ないんですよ」
「今期中は、予算がちょっと使えない」
予算の壁は、金額が高いから起きるとは限りません。多いのは「何にいくら効くのか」を上に説明できず、稟議が書けないケースです。
担当者の方は乗り気でも、決裁する役員の方は商談の場にいません。担当者が社内で説明できる材料がなければ、話はそこで止まります。
私たちのやり方:対象人数、減らせる時間、時給から効果を試算し、担当者の方がそのまま上に出せる稟議書の形でお渡ししています。
理由4 進め方が決まっていない(20%)
「業務の片手間で、やらされてるだけだから」
「自分たちの業務にどう使えるかが分からない。だから浸透しない」
AIの推進役が兼務で、本業の合間に進めている会社がほとんどです。社内ルールも「とりあえず作ったが古くなった」まま、というお話もよく伺います。
誰が、どの部署から、何を目標に進めるのか。ここが決まっていないと、ツールを入れても旗を振る人がいません。
私たちのやり方:最初に業務を洗い出し、効果が大きく始めやすい業務から順番を決めます。推進役の方には、私たちが隣について進め方ごとお渡しします。
理由5 効果が見えない、データが紙のまま(16%)
「効果が見えず、活用停滞」
「これ、紙なんですよ。申請書が紙」
導入後に「で、どれくらい楽になったの?」と聞かれて答えられず、次の予算が取れなくなる。これが5つ目の壁で、始める前に、何を数えれば効果と言えるのかを決めていないことが原因になっています。
もう一つは、AIに読ませたいデータが紙やFAX、担当者の頭の中にしかないケースです。この場合は、AIの前にデータの置き場所を整えるところから始める必要があります。
なお、壁を口にした会社の12%は「AIが間違えるのが怖い」という不安も挙げていました。「同じ質問を2回したら違う答えが返ってくる」という声もあります。これは、人が最後に確認する前提で業務を組めば、多くの場合は解決できます。
止まらなかった会社に共通していたこと
ここから先は、私たちが現場に入って伴走してきた会社を見て感じたことです。社内にAIが広がった会社には、共通点がありました。
- 推進役が決まっていて、その人に仕事の時間として割り当てられている
- 1つの部署・1つの業務から小さく始めている
- 始める前に「何時間減らせたら成功か」を決めている
- 研修のあとも、現場で使えるようになるまで付き添う人がいる
4つとも「進め方」の話で、ツールの性能は出てきません。どのAIを入れるかより、入れたあとに誰がどう回すかで結果が分かれていました。
集計方法
- 対象:2025年5月〜2026年10月に、株式会社AIworkerがお客様と行った商談のうち、録画・文字起こしが残っている775件(約590社)。社内会議、パートナー企業との打合せ、採用面接は除いています
- 方法:お客様側の発言から、AI活用の壁にあたる発言を抜き出し、1件ずつ内容を確認して9つの分類に振り分けました。そのうえで近い分類をまとめ、5つにしています
- 割合の分母:壁をはっきり口にした85社
- 言い回しの違いで拾えなかった発言もあるため、実際に壁を感じている会社はこれより多いと考えています
自社のどこで止まっているか、30分で整理します
「うちは理由1だな」「2と4が両方ある」と思われた方もいるかもしれません。株式会社AIworkerでは、30分の「AI業務診断」を行っています。いまの使い方とつまずいている場所をお聞きし、次に何をすればよいかを整理してお渡しします。