見積AIの費用対効果の試算方法|稟議に載せる数字の作り方
見積AIの導入を検討していて、上に説明する費用対効果の数字が作れずに困っている営業・事業責任者の方へ。試算の基本は「月の見積件数×1件あたりに短くなる時間×12か月」で年間の削減時間を出し、それを人数分と人件費に置き換えることです。そのうえで、空いた時間を何に使うかと、時間以外に変わる指標を並べると、稟議で返されにくい数字になります。
この記事では、見積AIの費用対効果を試算する手順を、私たちが設計している2つの案件の数字を使って説明します。どちらもPoC(小さく試す検証)の前で、記事に出てくる効果の数字はすべて試算です。実測値ではありません。
見積AIの費用対効果は、どの式で試算する?
見積AIの効果は、まず時間で出します。使う数字は、月の見積件数、いまの1件あたりの作成時間、AIを入れた後の1件あたりの作成時間、1人あたりの年間労働時間の4つ。ここから次の順で計算します。
- 年間の削減時間=月の件数×12か月×(いまの作成時間-導入後の作成時間)
- 何人分の時間か=年間の削減時間÷1人あたりの年間労働時間
- 人件費に置き換えた額=年間の削減時間×1時間あたりの人件費
人件費は、給与だけでなく会社が負担する社会保険料も含めた額で計算します。給与だけだと、効果を小さく見積もってしまうからです。1時間あたりの人件費は会社ごとに違うので、人事か経理に確かめた自社の数字を入れてください。

実際の数字を入れると、どうなる?
特注品の多い空調機器メーカーの案件では、次の前提を置きました。見積作成が月250件、1件の作成時間が平均90分、1人の年間労働時間が1,800時間です。
見積AIで過去の似た見積を探し、部品と工数の下書きを作る設計にすると、1件の作成時間は約30分になる見込みです。人の仕事は、ゼロから作ることから、下書きを確かめて直すことに変わります。
式に当てはめると、月250件×12か月×1件あたり60分の短縮で、年間の削減時間は約3,000時間です。1人1,800時間で割ると、およそ1.7名分になります。
持株会社のクリエイティブ部門の案件では、デザインの外注先を選ぶ作業を対象にしました。前提は月100件、相場の調査と外注先の選定・見積の比較に1件平均120分です。過去の似た案件と単価の幅をAIが示す設計にすると、1件約30分になる見込みです。月100件×12か月×90分の短縮で、年間約1,800時間、およそ1名分の試算になります。
どちらもPoC前の試算です。件数や作業時間が変われば、結果も変わります。

導入後の作成時間は、どう見積もる?
試算でいちばん外れやすいのが、導入後の作成時間です。AIが下書きを作っても、人が確かめて直す時間は残ります。この時間を少なく見積もると、試算は大きく外れます。
見積の作業を細かく分けて、AIに任せる作業と人に残る作業を分けてから見積もるのが確実です。過去の見積を探す、部品を選ぶ、数量と単価を転記する、といった作業はAIが下書きします。下書きを確かめる、単価を決める、客先に出す前に承認する、といった作業は人に残ります。人に残る作業の時間を足したものが、導入後の作成時間です。
空調機器メーカーの約30分も、確認と調整が中心になった後の時間として置いています。
導入後の時間は、PoCで実際に測って置き直すのが原則です。最初の試算は「この前提なら」という形で出し、PoCの後に数字を差し替えると決めておくと、稟議の場で前提を問われても答えやすくなります。試算の前提を一緒に置く進め方は、見積AIの開発・伴走のページにまとめています。
「人は減らないのでは」と言われたら?
稟議でよく返されるのが「時間が空いても、人が減らないなら費用は減らないのでは」という指摘です。これはもっともな指摘で、空いた時間はそのまま支出の削減にはなりません。
そこで、空いた時間を何に使うかを稟議に書きます。たとえば、ベテランが新人の見積を確かめる時間に回す、提出を早めて受注の機会を増やす、いま断っている見積依頼を受けられるようにする、といった使い道です。人を採らずに件数の増加に対応できるなら、採用を見送れる人数として書けます。
金額の効果として書くのは、会社として決めた使い道の分だけにします。試算の時間をすべて人件費の削減として書けば、後で説明がつかなくなるでしょう。
時間以外に、何を数字にする?
見積AIで変わるのは時間だけではありません。むしろ、時間以外の指標のほうが、見積AIを検討する会社の悩みに近いことが多くあります。
空調機器メーカーの案件では、時間以外に3つの試算を置きました。新人の見積作成時間は約180分から約40分へ縮み、ベテランとの差が小さくなる見込みです。部品の選定漏れによる手戻りは、発生率約15%から約5%へ。見積を出すまでの日数は、平均3営業日から当日〜1営業日を見込んでいます。
この案件で本当に困っていたのは、ベテランが抜けると見積が作れなくなることでした。新人がベテランと同じ部品の組み合わせにたどり着けるかどうかは、時間の削減よりも経営の判断に効く数字です。
クリエイティブ部門の案件では、見積の時点で予算の上限を超えそうな案件に印を付ける設計にしています。これまで発注した後に分かっていた予算超過を、発注の前に見つけるための指標です。

稟議には、何をどの順で書く?
稟議に載せる内容は、次の順にすると読み手が判断しやすくなります。
- いまの見積業務の数字:月の件数、1件の作成時間、作っている人数
- 試算の前提:導入後の作成時間をどう置いたか、1人あたりの年間労働時間
- 時間の効果:年間の削減時間と何人分か
- 空いた時間の使い道:会社として決めた使い道と、金額に置き換える範囲
- 時間以外の効果:新人の作成時間、手戻り、提出までの日数
- 導入の費用:初期費用・開発費・運用保守の内訳
- 確かめ方:PoCで何を測り、どの条件で次に進むか
費用は、使った量で変わる料金なのか、開発費と保守費なのかで比べ方が変わります。内訳を見積書で確かめ、効果の試算と同じ期間でそろえて比べてください。
よくある質問
Q. 見積の件数や作成時間を記録していません。試算はできますか?
A. できます。担当者に1週間ほど、見積1件ごとの作業時間を書き出してもらえば、試算の前提として使えます。最初は概算で置き、PoCの中で測り直せば十分です。
Q. 試算の数字は、どのくらい当たりますか?
A. 導入後の作成時間をどう置くかで大きく変わります。そのため、最初の試算は前提とセットで出し、PoCで実際に測った時間に置き換える前提で稟議を通すのが確実です。
Q. 人件費の削減として書かないと、稟議が通らないのでは?
A. 空いた時間の使い道を会社として決めれば、その分を金額で書けます。あわせて新人の作成時間や手戻りの減り方を並べると、時間の話だけより説得力が増します。
Q. 費用対効果の試算も、依頼先に手伝ってもらえますか?
A. はい。私たちは、いまの見積の流れを伺うところから一緒に前提を置き、試算を作ります。PoCで測った数字に置き換えるところまでが私たちの担当です。
依頼先を比べるときの見方は見積AIの開発会社の選び方へ。空調機器メーカーの案件の全体は特注品の見積をAIで下書きする設計で読めます。
御社の件数で、試算を一緒に作ります
株式会社AIworkerは、見積AIの設計から開発、現場での定着までを受け持ちます。月の件数と1件の作成時間を伺えば、御社の数字で試算を作り、稟議に載せる形に整えるところまでお手伝いします。
いまの見積の流れを30分でお聞きし、どの作業から始めるとよいかを整理する「AI業務診断(無料)」も行っています。AI業務診断(30分・無料)を予約する