2026.11.03
AI活用 見積AI

商社・卸の見積業務をAIで速くするには|仕入先への確認と値付けをどう分けるか

商社・卸の見積業務をAIで速くするには|仕入先への確認と値付けをどう分けるか

商社・卸で、見積の依頼が多すぎて回答が遅れ、営業が提案に時間を使えずに困っている方へ。商社・卸の見積をAIで速くするには、依頼の読み取り、品番の照合、過去の見積と仕入先情報の検索、見積書の下書きをAIに任せ、仕入値の確認と値付け、最終の承認を人に残すのが近道です。全部を自動にしようとするより、この分け方のほうが早く現場で使えるようになります。

この記事では、商社・卸の見積業務のどこに時間がかかっているかを整理し、AIに任せる作業と人に残す作業の分け方、始める前に整えるデータ、進め方を説明します。私たちが設計している2つの見積AIの案件の数字も使いますが、どちらもPoC(小さく試す検証)の前なので、数字はすべて試算です。


商社・卸の見積は、どこに時間がかかっている?

商社・卸の見積は、メーカーの見積と作り方が違います。扱う商品を選び、仕入先に値段と納期を確かめ、そこに利益をのせて出すという流れになるからです。

時間がかかる場所は、おおむね4つあります。1つ目は、メールや図面、手書きのメモから品名・型番・数量・納期を拾い出す「依頼の読み取り」。2つ目は、お客様の書き方を自社で扱う商品の品番に置き換える「品番の照合」です。3つ目が、在庫・仕入値・納期を問い合わせて返事を待つ「仕入先への確認」で、4つ目が、過去の取引条件を見ながら利益をのせ、書式に転記する「値付けと見積書づくり」になります。

札幌市の「令和7年度 ものづくり成果事例集」には、電気・機械・建築資材を扱う商社・卸の営業部門の課題が載っています。図面から記号や仕様を読み取り、合う部品を選び、数量を積算して見積書を作る作業が毎日のように発生しているそうです。部品の種類は100種近くあり、1人で月約130件の見積に対応するケースもあると書かれています(札幌市 ものづくり成果事例集 p.19、2026年11月時点)。

同じ資料は、受注率が必ずしも高くない中で多くの時間が使われ、営業が提案や関係づくりに時間を割けないことも指摘しています。見積の多くが受注につながらない以上、1件にかかる時間を縮めれば、そのぶん営業の時間が増えます。

商社・卸の見積は、依頼の読み取り・品番の照合・仕入先への確認・値付けの4か所に時間がかかる

AIに任せる作業と、人に残す作業はどう分ける?

分け方の基準は「間違えたときに、人がすぐ気づけるか」です。AIの下書きを見て、正しいかどうかをその場で判断できる作業ならAIに任せられます。判断を誤ると利益や取引先との関係に響く作業は、人に残しましょう。

AIに任せやすいのは、依頼のメールや添付から品名・型番・数量・納期を表に書き出す作業や、お客様の書き方を自社の品番の候補に置き換える作業です。品番は候補を複数出し、根拠を添える形にします。同じお客様・同じ商品の過去の見積と、そのときの仕入先や条件を探して並べること、見積書の書式に転記して下書きを作ることもAIの担当にできます。

一方、仕入先への最終の確認、値付け、客先に出す前の承認は人に残します。商社・卸の値段には、お客様との関係や今後の取引の見込みのように、データに残っていない判断が入っているからです。AIには、過去の似た取引の値段の幅を示させるところまでにとどめます。持株会社のクリエイティブ部門の案件でも、単価は過去の実績の幅を添えて示し、決めるのは人という設計にしました。

依頼の読み取り・品番の候補・過去の見積の検索・下書きはAI。仕入先への確認・値付け・承認は人

仕入先が多いと、AIで何が変わる?

商社・卸では、同じ商品を複数の仕入先から買えることがよくあります。どこに問い合わせるかを担当者の経験だけで決めていると、いつも同じ仕入先に頼むことになり、条件を比べる機会を逃しがちです。

クリエイティブ部門の案件では、外注先を選ぶ作業に同じ問題がありました。そこで、過去の似た案件と単価の幅に加えて、候補になる外注先を3社ほど示す設計にしています。前提は月100件、相場の調査と外注先の選定・見積の比較に1件平均120分です。この設計なら1件約30分になる見込みで、年間約1,800時間、およそ1名分の時間が空くと試算しました。

商社・卸に置き換えると、問い合わせ先の候補と、過去にその仕入先から買ったときの値段・納期を並べて示す形になるでしょう。どこに問い合わせるかを決めるのは人のままでも、比べる材料が最初からそろった状態で判断できるようになります。


回答までの日数は、どこまで縮められる?

回答の早さは、商社・卸にとって受注を左右する数字です。特注品の多い空調機器メーカーの案件では、過去の似た見積を探して部品と工数の下書きを作る設計にしており、前提は月250件、1件平均90分と置きました。

この設計で、見積を出すまでの日数は平均3営業日から当日〜1営業日になる見込みです。1件の作成時間は約30分に、新人の作成時間は約180分から約40分に縮むと見ています。部品の選び漏れによる手戻りも、発生率約15%から約5%への低下を見込みました。いずれもPoC前の試算です。

ただし、仕入先の返事を待つ時間はAIでは縮みません。回答までの日数を縮めるには、過去の条件のまま出せる見積と、仕入先に確かめる必要がある見積を最初に分けておくことが大切です。前者は社内で当日に回答し、後者だけ仕入先に問い合わせれば、全体の日数は短くなります。こうした分け方の考え方は、見積AIの開発・伴走のページにもまとめました。


始める前に、どのデータを整える?

見積AIの精度は、AIの性能よりもデータの整い方で決まります。商社・卸で最初に確かめたいデータは4つです。

  • 過去の見積書:どこに、どの形式(Excel・PDF・紙)で残っているか
  • 品番の対応表:お客様の書き方、自社の品番、メーカーの型番の対応がどこまで整っているか
  • 仕入先ごとの過去の仕入値と納期:見積のたびに確かめた結果が残っているか
  • 受注・失注の記録:出した見積が通ったかどうかが、見積と結びついているか

空調機器メーカーの案件でも、精度を左右していたのは、機器と部品の結びつきが整理されていないことでした。品番の対応表が担当者の頭の中にしかない場合は、AIを作る前にそれを書き出す作業から始めます。過去の見積がExcelとPDFでバラバラに残っていても、見積AIは始められます。

始める前に、過去の見積書・品番の対応表・仕入値と納期・受注の記録を確かめる

どこから始めると、失敗しにくい?

最初は、件数が多く、仕入先に確かめなくても出せる見積に絞るのが確実です。よく出る商品群や決まったお客様、過去の条件で出せる見積から始めれば、AIの下書きが正しいかを担当者がすぐに判断でき、効果も早く見えてきます。

まず、いまの見積の流れを書き出し、1件ごとの作業時間を1週間ほど記録します。次に対象を1つの商品群に絞り、品番の対応表と過去の見積を集めましょう。PoCではAIの下書きと担当者が作った見積を並べて比べ、下書きをそのまま使えた割合や担当者の評価といった合格の条件を先に決めておきます。条件を満たしたら、対象を広げていく流れです。

PoCで比べるときは、時間だけでなく、品番の取り違えや数量の誤りがどれだけ減ったかも見てください。商社・卸では、取り違えた商品を届けてしまうことが、時間のロスよりも大きな問題になるからです。


よくある質問

Q. メールやFAXで届く見積依頼でも、AIで読み取れますか?
A. メールの本文や添付のExcel・PDFは読み取れます。FAXや手書きは画像から文字を読み取る精度が落ちるので、読み取れなかった箇所に印を付けて人が確かめる設計にします。

Q. 値付けまでAIに任せることはできますか?
A. 私たちはおすすめしていません。過去の似た取引の値段の幅を示すところまでをAIに任せ、値段は人が決めます。商社・卸の値段には、データに残っていない取引先との関係が入っているためです。

Q. 基幹システムに見積の機能があります。それでもAIは必要ですか?
A. 基幹システムで標準品の見積が出せているなら、AIが役に立つのはその前後の作業です。依頼の読み取りや品番の照合、過去の似た見積の検索など、いま人が基幹システムに入力する前にしている作業を下書きします。

Q. 依頼先は、AIの開発会社と商社の業務に詳しい会社のどちらがよいですか?
A. 開発の力と、見積の流れを現場で確かめる力の両方が要ります。比べるときの見方は見積AIの開発会社の選び方にまとめました。


御社の見積の流れから、どこをAIにするか決めます

株式会社AIworkerは、見積AIの設計から開発、現場での定着までを受け持つ会社です。いまの見積の流れを伺い、AIに任せる作業と人に残す作業を分けるところから一緒に進めます。

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