過去見積がExcel・PDFでバラバラでも見積AIは始められるか|全部を片付けないデータ整備の進め方
過去の見積書がExcelとPDFに散らばっていて、「データが汚いから見積AIは無理」と社内で止まっている製造・商社の方へ。結論から言うと、始められます。最初の対象は1つの製品か作業。その見積に要る資料だけを集めて、項目の意味をそろえるところから始めます。
この記事で扱うのは、全部を片付けずに進めるデータ整備の6つの手順です。材料は、私たちが見積AIを設計している2つの案件です。どちらもまだPoC(小さく試す検証)の前にあります。
過去見積を全部整理しないと、見積AIは作れない?
作れます。むしろ、全部を整理してから始めようとすると、AIにたどり着く前に止まりやすくなります。
全社の見積書を集め、様式をそろえ、部品の一覧を直す。この作業には終わりが見えません。担当者は通常の業務と並行して進めることになり、半年たっても「まだ整理中」という状態になりがちです。そのうちに、何のための整理だったのかが社内で見えなくなります。
見積AIに必要なのは、全社のデータではありません。最初に試す製品や作業の見積を作るのに、何を参照しているか。その範囲だけそろっていれば、試作は始められます。

まず、何をどこまで集めればよい?
最初に、対象を1つに絞ります。見積の件数が多く、ベテランへの質問が集中している製品群や作業から選ぶのが目安です。
次に、その見積を作るときに実際に開いている資料を、ベテランに聞きながら書き出します。過去の見積書、部品や単価の一覧、工数の目安、依頼書や図面などです。ここで「あると便利そうな資料」まで広げないことが大事です。実際に見ているものだけを集めます。
集める件数も、最初から全件でなくてかまいません。よくある見積と、迷いやすい見積を何十件か選べば、どの項目が足りないかは見えてきます。
ExcelとPDFが混ざっていたら、何をそろえる?
様式の見た目をそろえる必要はありません。そろえるのは、項目の意味です。
たとえば「単価」という欄が、ある見積書では仕入れの原価、別の見積書では客先への売価を指していることがあります。いつの価格かが書かれていない見積書もあります。意味の違う数字を同じ欄として扱えば、AIの比較は誤ったものになるでしょう。そこで、原価か売価か、いつ時点の価格か、税や送料を含むかを、項目ごとに決めておきます。
品番や部品名の書き方の揺れは、対応表に残すのが基本です。「旧品番と新品番」「略称と正式名」を1行ずつ並べた表です。元の見積書は手を付けずに残せるので、あとで確かめ直すこともできます。
読み取れないPDFや、数字が食い違う見積書は、無理に使いません。「確認待ち」として分けておき、担当者に聞いてから戻します。AIの読み取りが自信のない箇所も同じ扱いにします。
空調機器メーカーの案件では、何がそろっていなかった?
特注品の多い空調機器メーカーでは、基幹システムで概算見積までは半自動で出せていました。困っていたのは、客先に出す本見積です。過去の似た見積を探して、違うところを直す作り方をしていましたが、その過去見積が整理されていませんでした。
いちばんの問題は、機器と部品の結びつきでした。どの機器にどの部品が要るかが手順書になっておらず、部品の一覧も機種ごとに膨大です。新人は部品と工数を選べず、見積に時間がかかっていました。精度を左右していたのは、AIの性能よりもデータの組み立て方でした。
この案件で検証に使うと決めた資料は、部品の一覧、工数、機種の情報、過去見積の4つです。結びつきを整えるのも、検証する機種に関わる分からです。
見積書の様式が取引先ごとに違う場合は?
もう1つの案件は、持株会社のクリエイティブ部門です。デザインの外注で受け取る見積書は、PDFとExcelが中心で、様式は取引先ごとにばらばらでした。
ここでは、最初の検証を主な取引先と主な制作分野に絞りました。範囲の中の見積書だけを取り込み、似た過去案件を探す精度と、概算の金額が人の算出とどれだけ近いかを確かめます。人が算出した見積と、AIが出した数字を並べて比べる形です。取引先と分野を広げるのは、その結果を見てからにしています。
認証や権限の管理、基幹システムとの連携は、検証の段階では入れず、本開発に回しました。検証で確かめるのは、そろえたデータで似た案件が探せるかどうかだけです。

図面を使わない見積でも同じ進め方でよい?
同じ進め方でかまいません。図面がない業務なら、依頼書や案件の情報から始めます。依頼の内容、数量、納期、希望する取引先といった、見積の前に必ず受け取っている情報です。
図面を読み取るAIは、図面の様式がそろっているほど精度が出やすくなります。図面の種類が多い会社は、まず依頼書と過去見積だけで似た案件を探すところから試し、図面の読み取りは後から足す順番も選べます。
データ整備は、どんな手順で進める?
2つの案件で踏んでいる手順は、次の6つ。
- 対象を1つの製品か作業に絞る
- その見積で実際に開いている資料だけを集める
- 項目の意味をそろえる(原価か売価か、いつ時点の価格か)
- 品番や名前の揺れは、元の資料を直さず対応表に残す
- 読めない資料や食い違う資料は、確認待ちに分けて人に返す
- 試作で見つかった不足を、次に整える対象に回す
6つめが大事です。試作してみると、「この部品の結びつきがないと下書きが作れない」「この項目は見積書によって意味が違う」といった不足が具体的に見えてきます。整える場所を試作で決めるので、整備に終わりが見えない状態を避けられます。

どの製品から始めるか、どの資料を集めるか。見積の流れと資料の置き場所が分かれば、一緒に決められます。進め方と体制は見積AIの開発・伴走のページにまとめています。
よくある質問
Q. 紙の見積書しか残っていなくても始められますか?
A. 始められます。対象に絞った分だけを読み取ってデータにします。読み取りに自信のない箇所は確認待ちに分け、人が見てから使う形です。
Q. 部品の一覧が古いままでも大丈夫ですか?
A. 試す製品に関わる部品から直せば足ります。全件を直すのは、試作で効果が確かめられてからで間に合います。古い品番と新しい品番は、対応表に並べて残しておけば十分です。
Q. 何件くらいの過去見積があれば試せますか?
A. 製品や見積の種類によって変わるため、一律には言えません。よくある見積と迷いやすい見積を選んで試し、似た案件が探せるかを見ながら件数を増やしていきます。
Q. データ整備は社内でやるべきですか、外に頼むべきですか?
A. 項目の意味や部品の結びつきを決めるのは、業務を知っている社内の方です。資料の読み取りや対応表の作成、試作は外部と分担できます。外に頼む場合の依頼先の比べ方は、見積AIの開発会社の選び方にまとめました。
見積AIの最初の一歩を、一緒に決めます
株式会社AIworkerの仕事は、見積AIの設計から開発、現場での定着まで。どの製品から始めるか、どの資料を集めるか、項目の意味をどうそろえるかまで、御社の見積業務に合わせて組み立てます。
いまの見積の流れを30分でお聞きし、どの作業から始めるとよいかを整理する「AI業務診断(無料)」も行っています。AI業務診断(30分・無料)を予約する